アイヌの文化を物質文化の側面からみると、鉄の鍋と漆塗りのお椀、平地住居などの特徴を持っていますが、こうした組み合わせが成立したのは13世紀以降。それ以前の物質文化とは大きく異なっています。
そこで13世紀以降の文化をアイヌ文化と呼んでいますが、アイヌが13世紀になって北海道に住み着いたのかといえば、そうではありません。アイヌは形質的に縄文時代に北海道に住んでいた縄文人につながっている、といいます。
では、アイヌの文化のなかに縄文文化の伝統を見いだすことはできないのでしょうか。これがなかなか難しい問題なんですね。
私自身は、東北北部に残るアイヌ語地名と、考古学的な状況証拠から、4世紀以降の北海道の人びとがアイヌ語を用いていたのは確かだとおもっています。縄文時代から使われていたとみて、まずまちがいないでしょう。さらにアイヌのクマ祭りも、縄文時代の祭りに起源があると考えています(これについては5月に出る『季刊東北学』19に書きました)。つまりアイヌ文化の中核は縄文文化にたどり得るという立場なんですが、ではほかにはどうでしょうか。
そんなことを考えていて、これだ!と膝を打ったのが、最近目にした設楽博己さんの論文です(設楽2008「イレズミの起源」『縄文時代の考古学』10、同成社)。
縄文時代にイレズミの風習があったか否か。この問題は、土偶の顔面装飾をめぐって明治時代から盛んに議論が行われてきたのですが、決定的な証拠がありませんでした。そこで設楽さんは、記紀からイレズミの存在が明らかな古墳時代の、イレズミを表現したとされる埴輪の文様を分析・類型化しながら、それを弥生時代の土器に描かれた人物絵画、さらには縄文時代の土偶へと時間を逆にたどって、それらの型式学的な連続性を明らかにしたのです(図は、この論文に掲載されている縄文の土偶から弥生の人物絵画へのイレズミ表現の変遷を示したもの)。縄文時代にイレズミが行われていたのはまちがいないようです。
アイヌの女性が口の周りと腕と手の甲にイレズミをしていたことはよく知られています。史料的にはかつて男性のイレズミも観察されているようですが、どうやらこうしたアイヌの文身も、縄文文化の伝統と考えてよさそうです。
設楽さんによれば、縄文時代には通過儀礼として男女ともイレズミを施していましたが、弥生時代にはその目的が僻邪・威嚇に変化して男だけが施すものとなり、古墳~飛鳥時代には身分の低い人びと、馬飼いや鳥飼いなど動物を扱う人びと、戦士、隼人系の人びと、エミシなど畿外の異人といった、非農民・被支配層が施すものに変化したといいます。う~ん、興味深いですね!
そこで13世紀以降の文化をアイヌ文化と呼んでいますが、アイヌが13世紀になって北海道に住み着いたのかといえば、そうではありません。アイヌは形質的に縄文時代に北海道に住んでいた縄文人につながっている、といいます。
では、アイヌの文化のなかに縄文文化の伝統を見いだすことはできないのでしょうか。これがなかなか難しい問題なんですね。
私自身は、東北北部に残るアイヌ語地名と、考古学的な状況証拠から、4世紀以降の北海道の人びとがアイヌ語を用いていたのは確かだとおもっています。縄文時代から使われていたとみて、まずまちがいないでしょう。さらにアイヌのクマ祭りも、縄文時代の祭りに起源があると考えています(これについては5月に出る『季刊東北学』19に書きました)。つまりアイヌ文化の中核は縄文文化にたどり得るという立場なんですが、ではほかにはどうでしょうか。
そんなことを考えていて、これだ!と膝を打ったのが、最近目にした設楽博己さんの論文です(設楽2008「イレズミの起源」『縄文時代の考古学』10、同成社)。
縄文時代にイレズミの風習があったか否か。この問題は、土偶の顔面装飾をめぐって明治時代から盛んに議論が行われてきたのですが、決定的な証拠がありませんでした。そこで設楽さんは、記紀からイレズミの存在が明らかな古墳時代の、イレズミを表現したとされる埴輪の文様を分析・類型化しながら、それを弥生時代の土器に描かれた人物絵画、さらには縄文時代の土偶へと時間を逆にたどって、それらの型式学的な連続性を明らかにしたのです(図は、この論文に掲載されている縄文の土偶から弥生の人物絵画へのイレズミ表現の変遷を示したもの)。縄文時代にイレズミが行われていたのはまちがいないようです。
アイヌの女性が口の周りと腕と手の甲にイレズミをしていたことはよく知られています。史料的にはかつて男性のイレズミも観察されているようですが、どうやらこうしたアイヌの文身も、縄文文化の伝統と考えてよさそうです。
設楽さんによれば、縄文時代には通過儀礼として男女ともイレズミを施していましたが、弥生時代にはその目的が僻邪・威嚇に変化して男だけが施すものとなり、古墳~飛鳥時代には身分の低い人びと、馬飼いや鳥飼いなど動物を扱う人びと、戦士、隼人系の人びと、エミシなど畿外の異人といった、非農民・被支配層が施すものに変化したといいます。う~ん、興味深いですね!
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